煮崩れしない&皮がやわらかくなる豆の煮方を検証してみた
煮豆や甘納豆を手作りしてみたけれど、豆が煮崩れて形が悪くなってしまったり、食べてみて皮が硬いと感じたことはありませんか?
わが家でも何度も煮豆や甘納豆を手作りしていますが、どうしても豆が2つに割れたり潰れたりしてしまいます。また、どれだけ時間をかけて煮ても皮の固さが完全にはなくならず、口の中に残る仕上がりになってしまうのです。
しかし市販の甘煮や甘納豆を見てみると、形が整っていて、皮もふっくらやわらかいものが多いように思います。
どうしたら市販品のような形も食感もよい煮豆や甘納豆が作れるのでしょうか?
そこで今回「家庭でも市販品のような煮豆・甘納豆は作れるのか?」を検証するために様々な豆の煮方を実践、どれほど煮崩れ防止・皮の軟化効果があるのかを調査してみました。
長い記事なるので、要点を知りたい方は「今回分かったことまとめ」にお進みください。
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豆の煮方について調べてみた
実験の前にまずはインターネット検索や料理本などで、豆が煮崩れなくなるまたは皮がやわらかくなるとされる方法を改めて調べてみました。
下記がその一覧です。
- 〇豆が躍らないようにする
- 〇魔法瓶を使う
- 〇砂糖やみりんを入れる
- ◎重曹を入れる
- ◎
圧力鍋を使う
〇は煮崩れ防止、◎は煮崩れ防止と皮の軟化両方の効果が期待できるものです。
一番よく見かけるのが、弱火で煮たり落としぶたをするなどして豆が踊る(=揺れ動く)のを防ぐという方法。
「魔法瓶を使う」は、豆は80℃以上で一定時間加熱すれば火が通る性質を生かし、魔法瓶ので保温して火を通すという方法です。お湯を沸騰させない=対流で豆が揺られることがないため「豆が踊らないようにする」の一種といえるでしょう。
「本みりんや砂糖」には小豆の煮崩れを防ぐ効果があると報告されています。
外部リンク:本みりんによる小豆蜜煮の煮崩れ防止効果(https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10814778/1)
「重曹」には豆のたんぱく質を分解し、皮をやわらかくしたり、火の通りを早くする効果があるといわれています。
「圧力鍋を使う」については、日ごろから圧力鍋で豆を煮ていて効果を実感したことがないため、今回の実験対象からは除外することにしました。
また、「水分が多く早く煮える新豆は、皮もみずみずしくてやわらかいのでは?」という推測から、上記のほかに「新豆を使う」の項目も追加することにしました。
- ・ 新豆を使う
【実験1】弱火でゆっくり煮る(新豆小豆)
最初の実験では「小豆が踊らないようにする」と「新豆を使う」の効果を検証しました。
しかし、この実験はうまく行かなかったため、簡潔な結果だけ記すことにします。【実験2】からが本題となります。
今回の条件
- 「富澤商店」の新豆の小豆を使用。
- 豆は乾燥の状態からに煮る。
- 豆のしわが伸びるまでに差し水を3回行う。
- 渋きりは行わない。
ただし差し水で増えた分の水は途中で捨てる。 - 火加減は豆がほとんど動かないくらいの極々弱火。
- 水加減は豆の頭が出るくらいを保つ。
- シリコン製の落とし蓋を使用。
- 茹で時間は約60分。
- 茹で上がった豆は流水で冷却してからざるに上げる。
結果:×
こちらが茹で上がった小豆。
皮がやわらかくなるまで長時間煮たところ、その間に多くの豆の皮が破けてしまいました。普段圧力鍋で茹でている小豆とそれ程見た目は変わらないように思います。
食べた時の印象は水っぽくてあまり良くありませんでした。あんこに使うのには問題ありませんが、トッピング等に使うにはホクホク感が足りないように思います。
【実験2】弱火でゆっくり煮る(新豆大正金時)
今回から豆を金時豆に変更しました(小豆よりも煮方がシンプルで比較がしやすいため)。
引き続き「豆を躍らせない」の検証です。今回も【実験1】と同じく極々弱火で豆がほとんど動かないように煮てみました。
今回の条件
- 「富澤商店」の金時豆の新豆を使用。
- 豆を一晩水に浸して戻す。
- 豆がほとんど動かないくらいの極々弱火で煮る。
- 茹で時間は60分以上。詳しい時間は不明。
- 汁ごと冷ましてからざるに上げる。
結果:×
皮が破けた豆が多くみられます。形の崩れ方は日ごろ圧力鍋で煮ている大正金時より激しいようにも思います。
皮の食感についてはあまり良くありません。やや硬く口の中残る感じがあり、市販の煮豆のようなやわらかさになりませんでした。
今回は新豆を使用しましたが、古い豆と皮の硬さにそこまで大きな違いは感じませんでした。
考察
煮崩れが激しかったのは、極端に煮汁と火力をおさえたことで熱が全体に均一に伝わらなくなり、煮えムラができたことが原因と考えられます。
火のあたりが強いところが茹で過ぎ状態になった結果、煮崩れがおこったのではないでしょうか。
おそらく「豆が躍らないようにする」自体に効果がなかったわけではないと思います。
【実験3】重曹を入れて煮る(新豆大正金時)
今回の実験以前から何度も豆を煮てきて、長時間煮ることで皮をやわらかくするのにも限界があるように感じていたため、今度は「重曹を加える」を試すことにしました。
今回の実験の詳しい条件は以下のとおりです。
今回の条件
- 「富澤商店」の新豆の金時豆を使用。
- 豆を一晩水に浸す際、水500mlに対して小さじ1/2の重曹を加える。
- 豆の戻し汁でそのまま豆を煮る。
- 火加減は豆が激しく踊らないていどの弱火。
- 茹で時間は約28分。
- シリコン製落とし蓋を使用。
- 汁ごと冷ましてからざるに上げる。
結果:○
前回より煮崩れた豆の比率が大きく下がりました。
皮が破けている豆は多いものの、割れたり潰れたりはしていないため形がよい印象を受けます。
皮の食感も大きく向上しました。皮の歯応えが弱く、口の中に残りません。市販の煮豆に劣らないすばらしいやわらかさに仕上がりました。
また、重曹を加えなかった【実験2】は1時間ほど煮たのに対し、今回は30分以下という短い時間でしっかり火が通りました。
さらに、通常豆は中身に火が通ってからもさらに煮続けることでようやく皮までやらかくなるのですが、今回は中身がまだ硬いうちに皮が先にやわらかくなったように感じました。
考察
火の通りが早いことは間接的に煮崩れ防止に影響したと考えられます。茹で時間が短かければ、その分湯の中で豆が揺れ動く時間も短くなるからです。
また、皮が破けていても割れたり潰れたりはしていなかったのは、豆の中身がいつもより硬くしっかりとしていたからだと思われます。重曹のおかげで皮をやわらかくするために長時間煮る必要がなくなり、中身に火が通り過ぎるのを防げた結果いつもよりしっかりした硬さに仕上がったのだと考えられます。
もしかすると、重曹に直接豆の粒子を引きしめたり崩れにくくする効果がある可能性もありますが、家庭の環境でそれを調べるのは難しいため何ともいえません。
【実験4】重曹を入れて魔法瓶で煮る(金時豆)
前回の実験で皮のやわらかさに関しては満足な結果が得られたため、今回からは皮を一切破かないことを目標にして行きたいと思います。
まずは「魔法瓶を使う」と、前回高い効果がみられた「重曹を加える」を組み合わせてみました。
魔法瓶に豆と熱湯を入れれば、放置するだけで豆を煮ることができるそうです。
この方法は沸騰の衝撃で豆が揺れることがないため、最大限「豆を躍らせない」煮方と言えるのではないでしょうか。
しかし、我が家に魔法瓶がないためシャトルシェフと言う保温容器付きの鍋で代用しました。この鍋は魔法瓶より保温力が劣るため、保温の前に少し豆を煮る必要があります。
今回の実験の詳しい条件は以下のとおりです。
今回の条件
- 「ホクレン」の金時豆を使用。収穫時期不明。おそらく1年以上前に収穫されたもの。
- 豆は乾燥の状態から煮る。
- 水750mlに対しして重曹小さじ1/3を加える。
- 鍋に水と豆を入れて沸騰後8分煮たのち、保存容器で60分保温する。
- 上記の方法では火の通りが不十分だったため、もう一度煮立てて20~30分保温を2回くり返した。
結果:〇
豆が動かないように煮た今回と、普通に煮た前回と見た目の差はあまり感じられませんでした。皮は破けていますが形は崩れていません。
食感についても特に前回と変わりなく、皮までやわらかく煮えています。
考察
沸騰による衝撃をなくすことで皮が一切破けなくなるのを期待していましたが、前回同様皮は破けてしまいました。
豆がまだ少し硬いうちはほとんど破けないのですが、豆の中身がしっかりやわらかくなるまで煮ると破けてしまいます。まるで皮が破けることが中身に火が通った合図であるかのようです。
以上のことと、形は崩れていないことから、今回皮が破けた原因は外からの刺激ではなく、豆の内側にあると考えることができます。
でんぷん質な中身は火が通ることで水をよく吸収するようになり、皮の中に納まらないほど膨張して内側から皮を破ってしまうのかもしれません。
また、新豆か古い豆かはやはり皮のやわらかさにそこまで大きく関係しないようです。今回は収穫から1年以上たった豆を使用しましたが、皮はしっかりやわらかくなっていました。
【実験5】重曹と砂糖を入れて煮る(金時豆)
重曹と魔法瓶を組み合わせても皮の破れを完全になくすことはできなかったため、続いて「砂糖やみりんを加える」を試してみました。
今回の実験の詳しい条件は以下のとおりです。
今回の条件
- 「音更農業協同組合」の金時豆を使用。年内に収穫されたもの。
- 豆を水に一晩浸す際、水750mlに対して重曹小さじ3/4を加える。
- 戻し汁ごと煮立てて茹でこぼして水を下記のものにとりかえたのち、沸騰後約25分煮る。
- 水800mlに対して砂糖を40g加える。
- 金属製の落し蓋を使用。
- あら熱をとってからざるに上げる。
結果:△
前回、前々回よりも形がやや崩れてしまいました。
食感についても少し皮が硬くなったような気がしますが、砂糖を入れたことが原因ではないと思われます。
考察
すこし煮崩れが起こりましたが、豆を変えたこと、茹でこぼしを行ったことなどが影響している可能性もあるため、「砂糖を加える」が関係しているのかは分かりません。
また、皮が前回より硬くなってしまったのは、茹でこぼしを行ったことで重曹入りの水で豆を煮る時間が短くなったからと考えられます。皮を十分やわらかくするには、しばらく煮てから茹でこぼした方が良いのかもしれません。
今回の実験は前回からの変更点が多かったため、砂糖を加える効果の検証や、煮崩れが起こった原因の特定をすることができませんでした。
【実験6】重曹と砂糖を入れて魔法瓶で煮る(金時豆)
引き続き「砂糖やみりんを加える」の実験を行いました。
今回は砂糖の量を増やし、さらに魔法瓶(のかわりにシャトルシェフ)を使って豆を極力動かさないようにして煮てみました。
また、皮の硬さが残らないように茹でこぼし前の茹で時間をのばしてみました。
今回の実験の詳しい条件は以下のとおりです。
今回の条件
- 「音更農業協同組合」の金時豆を使用。年内に収穫されたもの。
- 豆を水に一晩浸す際、水750mlに対して重曹小さじ3/4を加える。
- 戻し汁で5分煮てから茹でこぼし、水を下記のものにとりかえ、沸騰したら保温容器で保温する。保温時間は不明。
- 水800mlに対して砂糖を80g加える。
- あら熱をとってからざるに上げる。
結果:△
前回「実験5」同様、少し形が崩れてしまいました。
しかし食感は皮までやわらかく煮えています。
考察
5分煮てから茹でこぼしをしたところ、皮の硬さはなくなりました。やはり重曹入りの水でしばらく煮た方が、皮はよりやわらかくなるようです。
煮崩れについては、違う豆を使っていた前々回までと豆の崩れ方の印象が違うことから、煮方ではなく豆自体の性質なのではないかと思います。
これまで見てきた煮崩れた豆は、まん中に亀裂が入って割れてしまったものや潰れてしまったものが多く見られました。しかし、今回と前回は子葉がきれいに2つに分わかれ、豆の構造にそって分裂しているように見えるものが目立ちます。
煮崩れのしにくさ、皮の破けにくさ・やわらかさなどは、じつは豆によっても大きく違うのかもしれません。これまで煮方にばかり注目してきましたが、形良くやわらかい煮豆・甘納豆を作るには、まずはそれに適した豆を見つけることから始める必要があるのかもしれません。
今後の実験について
「砂糖の有無」が煮崩れに影響するのかを検証するには、まず良い豆の選び方を確立し、安定した実験を行えるようにする必要がありそうです。
しかし、その方法が見つかるまでを細かく記事にまとめるととても長くなりそうなので、ひとまずこの実験はここで区切りをつけようと思います。
安定して実験を行う方法にあるていど目星がついてから、また再開したいと思います。
追記
皮を破かず煮ることの重要性について
後半の実験からは皮を一切破かず煮ることにこだわってきましたが、形が崩れてさえいなければ見た目は十分うつくしいため、皮が破けていても気にする必要はないのではとも思います。
それに、豆は甘煮にすれば引き締まって少し硬くなります。すると皮の破れが少し目立たなくなり、丈夫さも増して形も崩れにくくなります。
皮が破けることに対して、そこまで神経質になる必要はないのかもしれません。
今回分かったことまとめ
重曹を入れると皮がやわらかくなる&煮崩れしにくい
今回試した中でもっとも高い効果を感じられたのが、重曹を入れて煮る方法です。
重曹を加えると皮はとても軟らかくなり、歯ごたえや口の中に皮が残る印象がなくなります。
また、火の通りも早くなり茹で時間が大幅に短縮されます。それにより豆が踊る時間も短くなるため、煮崩れもおこりにくくなります。
まるで全く別の豆を使っているように感じられるほど大きな変化を感じられるので、ぜひ試していただきたいイチオシの方法です。
煮崩れしやすい豆としにくい豆がある
同じ種類の豆を同じ方法で茹でても、皮が破けやすい時と破けにくい時があったり仕上がりに差がありました。 中には豆を洗う時点で激しく皮が破けてしまうものもありました。
豆の煮崩れには茹で方だけでなく豆自体の性質も大きく影響するようです。
もしかすると、皮の食感にも豆によって違いがあるのかもしれません。これは今後くわしく調査してみようと思います。
水&火加減の控えすぎは逆効果
豆を躍らせたくないからといって、豆の頭が出るくらい煮汁を控えたり、火加減を極々弱火にしたりすると熱が全体に伝わりづらくなってしまいます。
すると温度の高いところと低い所で火の通り方に差が生まれ、一部の豆には火が通り過ぎて煮崩れてしまいます。
豆が躍らせないこと自体は煮崩れ防止に効果的ですが、極端に水や火の加減をおさえることはかえって逆効果。水加減はかぶるくらい、火加減は豆が激しく踊らないていどを保った方が良いようです。
新豆と古い豆で食感はあまり変わらない
新豆は古い豆より早く火が通りますが、皮の食感についてはそれほど大きな差は感じませんでした。
どちらの豆も皮が硬く感じることはありますし、重曹を加えて煮ればやわらかくなります。
豆を動かさなくても皮は破ける
豆の皮が破ける原因は、豆同士がぶつかる衝撃だけでなく内部の膨張もその一つと考えられます。
魔法瓶で豆を動かさずに煮ることで外からの衝撃をなくしても、内側からの力でどうしても皮は破けてしまうのかもしれません。
皮を一切破かずに煮るというのはとても難しいようです。
ただし、皮が破ける=煮崩れではありません。皮が破けていても中身がしっかりしていれば、豆は形を保つことができます。少しくらいなら皮が破けても気にする必要はないと個人的には思います。
今回検証しきれなかったこと
「魔法瓶を使う」「砂糖やみりんを入れる」の効果は今回の実験では十分に検証することができませんでした。
また、すでに述べたの他の説もあくまで個人的な見解であることをご留意ください。
そして、実験をくり返す中で「豆によって皮の食感に差はあるのか」などの新たな疑問も生まれました。
今後も実験・調査は続けて行き、新しく判明したことなどがあれば随時追記・修正して行きたいと思います。