焼き芋は低温で焼くと本当に甘くなるのか?
「焼き芋は低温でじっくり焼くと甘くなる」と言う話を聞いたことはありませんか?
これにはきちんと科学的な根拠があるのですが、実際、どれくらい差がでるものなのでしょうか?人間の味覚でその違いは感じられるのでしょうか?
そこでこの説を検証するために、異なる温度で焼いた焼き芋3つを実際に食べ比べ、甘みの違いを感じるか実験してみました。
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目次
そもそもなぜ低温がいいの?
さつまいもが加熱すると甘くなるのは、さつまいもに含まれるβ-アミラーゼという酵素によってデンプンが分解され、甘みを感じる「麦芽糖」に変化するからです。
この働きが活発になる温度帯が70°前後のため、この温度を長く保持することで麦芽糖の量が増え、より甘みが強くなるのです。
実験の概要
実験の条件
- 150度で70分 + 蒸らし10分
- 250度で40分 + 蒸らし10分
- グリル上下強火、焼きと蒸らしの合計41分
備考
- サツマイモの品種はシルクスイート。
- さつまいもはアルミホイルで包む。
- ひとつのさつまいもを切り分けて比較する。
- 二つのさつまいもで同じ実験を行う。
- 完全に冷めてから食べる。
詳細
実験の条件についてもう少し詳しく解説します。 細かい話になるので読み飛ばしていただいても大丈夫です。実験の結果はこちら、まとめはこちらです。
今回は150度と250度のオーブンレンジ、上下強火の魚焼きグリルの3つの温度を比較しました。 魚焼きグリルの正確な温度は不明ですが、 300~400度にもなると言われています。
1と2はオーブンを止めた後、さつまいもを中に入れたままにして10分蒸らしました。
魚焼きグリルは火をつけっぱなしにしていると温度が高くなりすぎて止まってしまうので、7分焼く→火を止めて5分蒸らすをくり返しました。 最後の蒸らし時間だけ10分に延ばしました。
備考①
シルクスイートは食感がなめらかな「しっとり系」に分類されるさつまいもです。
備考②
アルミホイルで包むことで水分の蒸発を防ぎ、しっとり仕上げます。
備考③
別々の芋を使用すると個体差が生じるので、 ひとつのさつまいもを切り分けてそれぞれの温度で焼き上げました。
備考④
実験の結果をより正確なものにするために、 2つのさつまいもで同じ実験を行いました。
備考⑤
甘みの感じ方は温度によって変化するため、差が生じないように完全に冷めてから食べ比べました。
結果
こちらが出来上がった焼き芋の断面と、特に焼き目が濃かった面の写真です。150度の焼き目は撮り忘れてしまいました。
断面を見ると低温のものほど透明感が強いようにも見えます。
さつまいもAの方が濃い焼き目がついたのは、さつまいも自体の糖分がBよりも高かったか、火のあたりが強かったなどが原因として考えられます。
今回の結果を表にまとめると以下のようになります。
甘さ | しっとり感 | 焼き目 | |
---|---|---|---|
150度 | ☆☆ | ☆☆ | ☆ |
250度 | ☆☆ | ☆ | ☆☆ |
グリル | ☆☆ | ☆ | ☆☆☆ |
甘さ | しっとり感 | 焼き目 | |
---|---|---|---|
150度 | ☆☆+ | ☆☆ | ☆ |
250度 | ☆☆ | ☆☆ | ☆☆ |
グリル | ☆☆ | ☆ | ☆☆☆ |
☆二つが今回の結果の中間値です。
星が多い=良いわけではない点、一般的な焼き芋と比較した評価ではない点に注意してください。
甘さについて
甘さの違いについては正直よくわかりませんでした。
さつまいもBの150度は、目を閉じ、舌の上で芋をじっくり転がして食べてみて、ようやく少しだけ他より甘いかもしれない?と感じましたが本当に微々たる差です。 3つが入れ替わっていても全く気づかないと思います。
考察
以前「弱火でゆっくり茹でたさつまいも」と「普通に茹でたさつまいも」を食べ比べたことがあるのですが、その時は 「弱火で茹でたさつまいも」の方がはっきりと甘みが強く感じられました。
そのため「低温で加熱した方が甘みが強くなる」こと自体は本当なのだと思います。
しかし今回の実験では違いが感じられなかったということは、150~300度ではそこまで大きな差は生まれないのもしれません。
もしくは、さつまいもの甘みがもともと弱くて違いが分かりにくかった、低温と言うには150度は温度が高すぎた、なども原因として考えられます。
しっとり感について
食感については明確な違いが感じられました。
150度で焼いたものと、さつまいもBの250度は他よりも少しだけしっとり感が強く柔らかい印象を受けました。
ねっとりとした焼き芋が好きな方にはこちらの方が美味しく感じると思います。
焼き目について
高い温度で焼くほど濃い焼き目がつきました。
150度はほとんど焼き色が見られませんでしたが、グリルは逆に焼き目が濃すぎて苦味が感じられました。250度が最もバランスが良いように思いました。
まとめ
今回の実験では、低温でも高温でも甘さに違いはほとんど感じられませんでした。
今回のような焼き方では味に大きな違いは生まれないようです。 はっきりとした差を感じるにはより極端な比較をする必要がありそうです。
しかし、食感は低温で焼いた方がしっとり感が強く確かな違いが感じられました。
そのため、お店で売られているような焼き芋が作りたい場合は、グリルよりもオーブンの使用をおすすめします。
ただし低温は焼き目がつきにくく、カリッとした食感や香ばしさは楽しめないという欠点もあります。
焼き目も欲しい場合は150度より少し温度を上げるか、150度で焼いた後に温度を上げて追加で焼くようにすると良いかもしれません。
以上、 焼き芋は低温で焼くと本当に甘くなるのか?の検証でした。